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――― 厳しいスタートだったと思いますが、その後、笠間工芸の丘が成長してきた秘訣は何でしょうか。
久保さん: 私が注力してきたのは「人」を育てるということです。ひとつは従業員、もうひとつは顧客。顧客管理をしっかりすることですね。
最初に、私が、取締役になるから、一緒に働く従業員も私に決めさせてくれ、と頼んだんです。それで、職員を公募し48人の中から10人を選びました。そこで、私は銀行人事部時代のキャリアや、人材育成プランを作っていたりしたので、それが生きました。人が育ってくると、従業員の接客態度、販売部門のディスプレイの工夫などもしてくれるようになりました。
――― 顧客管理というのは具体的にどのようなことをされたのですか?
久保さん: 例えば、陶芸品のお店で、高価な陶器が売れることがあるとしますよね。それで、その販売店さんに行ってどんなお客さんが買っていったのかと話を聞くと、「いや〜、壮年のお金持ちそうな方だったよ。とっても陶器の話でも盛り上がってね・・・」で終わりです。連絡先どころか名前も分からない。私の経験から、そういう高価な陶器を買ってくれるお客様というのは、2回、3回と足を運んでくれることが多々あるんですよ。でも、これまで、そういうことをしてきていなかった。お得意様も全然分からない状況でした。
そこで、工芸の丘では、1万円以上の作品を買ったお客様の情報管理をしています。8年たった今、お得意様もできましたし、高額な商品を購入されたお客様には商品をご自宅までお届けし、手渡しで渡すようにしています。これは、よく百貨店でされている方式、外商方式ですよね。これによって、コンスタントに売り上げをキープすることができるようになりました。
前に、ある陶器をお客様の家まで持っていったときのこと。家にお通ししていただいたら、部屋いっぱいに陶器が並んでいました。私も陶器が大好きなものですから、ついつい話し込むのですが、でも、それがまたマーケティングにもなっていて、他の陶器が好きな方を紹介していただいたりすることもありました。
そして、どの陶器がどれだけ売れたか、という情報を、販売店や窯元へフィードバックしています。こうした情報を流すことで、作家と販売店がまた話をするようになり、作家だけでは気付かなかったことに気づくようになります。そうすると、より高い価値の創造につながっていくのです。
――― 久保さんは陶器がお好きなようですが、作家や、目の肥えたお客さんとコミュニケーションをするには、相当な努力が必要だったのではないですか?
久保さん: もともと陶器は好きだったんですが、私の尊敬する友人に、お亡くなりになりましたが、地元の人間国宝松井先生が居られました。陶器や技法についてたくさんのことをご指導いただきました。毎日のように松井先生のところを訪れ、よく一緒に陶器を見ていました。私も、始めはどれがよいものなのか、全然分からなかったんです。でも、ある日、先生と「いいねー」と思った陶器が一緒だったことがあったんです。作家と付き合うときには、いいものの基準を作ることですね。いいものをたくさん見ること。そして、作家とのコミュニケーションでは、作家のちょっとしたことでも、いいところをほめることですね。そして、何よりも、陶器を愛することだと思います。
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